5月26日(土)生命科学の進展と人類の福祉

 うす晴れ。


 ヒトゲノム計画で13年かかって約60億対のDNA配列を確定したのは2003年。今ではこれが15分で分かりまふ。これが技術の進歩と言ふもの。しかしその中で機能している遺伝子は3万前後と以外に少なく、今確定しているものでヒトは2万2千ありまふ。この機能を殆どヒトと共通な遺伝子を持っているマウスで網羅的に研究しようというプロジェクトIMPC(国際マウス表現型解析コンソーシアム)が昨年発足しました。
 丁度ヒトゲノム計画が発足した1990年頃から、特定の遺伝子を欠損させたES細胞から発生させたノックアウトマウスが研究に使われるようになりました。これらの重複防止やデータの一元管理・公開のためにIMPCは約2万ある哺乳類の遺伝子機能百科辞典を10年間で作る計画です。
 しかし遺伝子の中には、それが欠損すると誕生前に死んでしまうようなものが約30%あります。それらを調べる為に、特定の時期に特定の臓器だけで特定の遺伝子を欠損させるCle酵素を組み込んだCleマウスも作成されます。

 しかし難しいのは、一見なんの働きもしていないように見える遺伝子の機能を調べることです。ある非常に特殊な環境(極寒、灼熱、乾燥、酸素が薄い、光が当たらない、・・・)や特殊な感染症、特殊なものを食べた時にだけ役に立つ遺伝子は、そのケースは無限に考えられるから悪魔の検証になりかねません。ま、目に見える大切な役割のものから遺伝子の機能は徐々に明らかになってくるんでせうね。ともあれ遺伝子機能の解明は創薬・治療法開発とともに生命現象を目に見えるものに変えていくでしょう。今後は多数の遺伝子や生活習慣などが関わる複合現象をどう解析するかでしょうね。
 次に向かうのは、エピジェネティクス(後天的遺伝発現)かな。すでにいくつかの機構が明らかにされていますが、個々の表現型との対応はこれからの課題です。(調べれば調べるほど課題がどんどんでてくる生命科学も情報爆発の一例かも。)