五感の仕組みって入り口からして難しい

感覚って目、耳、鼻、舌、皮膚を通して外部の刺激が入ってくるんだ
けど、最終的には神経細胞の電気刺激に変換されるこの仕組みがなか
なか難物。最先端研究の聞きかじり。



感覚はそれぞれの刺激に対応した感覚受容細胞の細胞膜上にある受容体
を通して取り入れられる。ま、外部からの情報だから膜上にあるのは
うなずける。これら受容体を構成するのは膜タンパク質とよばれ真核
生物(バクテリアじゃ無い生物)由来のものだ。




通常、タンパク質の構造はこれを沢山集めて結晶化させ、高輝度のX線
使って解析する。しかし膜タンパクつうのは取り出すのも難しいし、
増やすのも難しいし、結晶化させるのも難しいという三重苦を生まれ
ながらにして背負っている。そのためようやく2005年に至ってごく簡単
な構造のものが世界で始めて構造解析されたくらいだ。




ところがここで世界に冠たる日本の研究者が原核生物バクテリアなど
の悪環境下でもよく増える生物)をつかう手法を考えた。まずDNA解析
して人の感覚受容体タンパクによく似た構造のバクテリアを捜す。
バクテリアはその多様性が特徴だからそのようなものが、いくらでも見
つかる。次にそのタンパクが結晶化しやすいかどうかを調べる。なんか
螢光体をくっつけて均質性のようなものでスクリーニングするんだ。




で、最後はバクテリアを使ってそのタンパクを沢山作って結晶化させX線
で解析して構造を特定すると。しかしここで終わりではない。構造から
機能や仕組みが推定できるが、これが正しいかどうかを検証しなくては
ならない。そのため構造上重要だと考えられる個所に人工的に変異を起
こし、機能がどう変化するのかを見る。ここまでやって初めてタンパク質
の働く仕組みが分かったいえる。どーです。めんどくさいでしょう?



今のところ脳内物質セロトニンを細胞内に取り込む輸送体という膜タンパク
の構造解析をこの方法を使ってわずか1年半で成功させ、新しい抗鬱剤
開発の可能性と共に注目されている。




しかしかような地道な研究がそのうち我々の人間観にコペルニクス的な
大転換を齎すであろうよ。楽しみですねえ。ではでは