12月25日(木)ずいぶん遠くに来たもんだ。

こんにちは。晴れ。昼はあたたか。




今日の立ち読み:『人類の足跡10万年全史』
          (スティーヴン・オッペンハイマー

自分が何処へ行くかを知るためには、
自分が今いるところを知らなければなりません。
そして、その為には自分が何処から来たのかを知らなければ
なりません。

                「南洋の言い伝え」より

アフリカの一隅で生まれたホモ・サピエンスは気候や火山活動
の影響を受けて氷河期には1万人くらいに減って存亡の危機に
立たされたこともあります。しかしその厳しい環境を生き延び
数十万の集団が東アフリカで生息圏を築きあげました。






近年、アフリカからの脱出ルートを調べるため分子生物学が使
われるようになりました。母系しか伝わらないミトコンドリア
遺伝子や男系しか伝わらないY染色体を使って人類のイブや
アダムを突き止める遺伝子解析が世界規模で行われた結果、
アダムとイブの故郷はアフリカ東岸で、人類(ホモ・サピエン
ス)はたった一回のエクソダスで世界中に拡散したと思われま
す。約8万年前のことです。ルートはエチオピアからアラビア
半島南端を通り海沿いにインドまで達しました。





それ以前の12万年まえにはエジプト→シナイ半島経由で脱出
があった形跡はありますがこの集団はシリアあたりで全滅しま
した。このあとも何回か脱出がありましたがすべて全滅してお
ります。移動も厳しいですねえ。





ですから、アフリカの外で今残っている人類はすべて同じ集団
から分かれたといえます。インドまで達したこの人類は海岸沿
いに進んだ一団とインダス川経由で内陸に進んだ一団に分かれ
ます。この頃の人類は比較的安全な海岸と大河を使って移動し
たようです。内陸に進んだのは更に分かれて、その一派はヨー
ロッパに達し、海岸を進んだも更に分裂し、その一派はオース
トラリアに達します。これは5万年くらい前です。アジアには
インドから内陸に入った一波と海沿いに北上した一派が進出し
、更にベーリング海峡が氷結した2万年前頃にアメリカ大陸に
渡りました。





このようにアフリカというエデンから脱出できたのはたった1回
で、その子孫が全世界に拡散したという説が遺伝子的に有力視
されています。現在その系統樹の年代を更に精密化する作業が
行われています。従来、世界各地で多源的に旧人から新人が発
生し、しかも欧州人が一番進化しているという説がありました
が、これらはすべて否定されております。つまりアボリジニ
北欧人もまったく同じホモ・サピエンスだということです。






学問が進むと世界の見え方も変って来る一例ではないでしょう
か。まさに人類皆兄弟ですねぇ。しかしホモ・サピエンスとは
「知恵あるヒト」という意味ですから、サピエンスでないヒトも
たくさんいるような気もする今宵のお空はお星様キラキラ。