中秋の名月

みなさん、こんばんは。弱々しい蝉の声が聞こえてきました。たった
一匹。むなしく彼女を求めてすすり泣く。ズッシーン。




蝉たちは7年地下にいて、地上に出たら七日間愛の歌を歌いまくります。
うたい続けて喉がつぶれたら死にますか。それでも生きますか。
実はおなかの発声筋で鳴くんだけど、ほんとに声が嗄れるんだよ。
それに逃げるとき、捕まったとき、オスたちを集めるとき、メスに
呼びかけるとき、とみんな声が違うんだ。





俺はセミの本性は実は地下にいるときで、地上の奴は仮の姿だと思うんだ。
土の中だと愛する人に会えないから、発声と移動に適した仮の姿に実を
ヤツシテ苦労して地上に姿を現し、愛する人に全てを捧げて、コロっと
死んじまう。悲しい恋のものがたり。そう言えば、人間の本性も盲目的な
生への意思とか看破した悲観的な人もいたねぇ。





と、ふと空を見上げれば、輝くようなお月さま。そうだ今宵は十五夜だ。
酒でも飲んで団子も食って、さあ皆の衆、この名月を愛でようではないか。
エンマこおろぎやオカメこおろぎたちの合唱も始まっているよ。
みゅーみゃうみゃお、みゃうみゅーみゅーと子猫たちも鳴いている。
のどかなのどかな秋の夜、おお、月、そらに知ろしめし、すべて夜は事も
無し、かよ。おやすみなさいまし、またあした、元気になろうね。




くぅーっ、肩こりがコリコリ直らん、ネコちんにモミモミしてほすい。