2月23日(月)抑制を抑制したら、しやわせですか?

 朝のうち雨残るも、のち薄曇り。6℃〜18℃、67%。かなり暖か。






 パスウエイとは:

 細胞内、細胞間のイロエロな通信経路(タンパク質による)のことをパスウエイと言います。電気信号のオン/オフじゃなくって、何万種もあるタンパク質を使った化学的な情報伝達の仕組みが大分分かってきますたよ。その中でこんかいお話しするのは、免疫系と癌のことなんす。このパスウエイはアクセル(活性)とブレーキ(抑制)の組み合わせで出来てますが、賦活系より抑制系の方が多いのは何十億年の自然の知恵。


 免疫系はT細胞という攻撃司令官によって活動を開始します。このT細胞は無数にある異物(抗原)を個別に識別するように胸腺で作られます。このT細胞が異物を認識しそれを攻撃した後、PD-1(プログラムド・デス)というブレーキタンパク質が働き、T細胞へ沈静化シグナルが送られます。PD-1に不調を起こすと、自己免疫疾患になることも知られています。

 正常細胞が癌化すると、当然これもT細胞によって異物と認識され、免疫系の攻撃指令が出されます。異物が攻撃されて無くなると、周囲の細胞からPD-1を抑制し、免疫活動を沈静化するシグナルを受け取り、攻撃の矛を収めます。しかし癌細胞もさるもの引っ掻くもの、この沈静化機構を悪用して、沈静シグナルPD-L1を偽造してPD-1を抑制し、ひいてはT細胞の活動にブレーキを掛けてしまうのですぅ。このようにして癌細胞は免疫系の攻撃を反らして増殖していくんですぅ。

 このような知見が得られた後に医学薬学界はどーしたか?T細胞にブレーキを掛けるPD-1にブレーキを掛ける抗体を開発して、T細胞が癌細胞を攻撃し続けれるようにしたのです。この免疫療法は既に厚労省により承認されました。がん細胞に由来する過度の沈静化シグナルが遮断され、T細胞の細胞傷害機能が回復し、がんが著しく縮小することがわかりました。この新しいがん免疫療法は副作用が少なく、かつ長期間に渡って耐性ができないので、とても有望なのであります。ジャン

 すかすこのような複雑なパスウエイのホンの一部が垣間見えただけで、有望な知見が得られるのですから、生命の複雑さと神秘を感じさせてくれますねィ。この複雑さが、生命のロバストネス(頑強性?)を担保してるんですぅ。なにしろ電子回路みたいにたった1か所が壊れて全部が止まるってこたーないですから。